クローズアップ現代「外国人患者を獲得せよ~医療ツーリズムの光と影~」

民主党政権は、政府の新成長戦略の中で、医療を国際化する医療ツーリズムを推進し、アジアにおける医療産業で一位を目指したい、そしてそれを雇用の拡大や経済成長につなげていきたいとしている。すでにアジアではこうした医療ツーリズムの患者の奪い合いが起きており、早くから取り組み始めたタイでは、病院に高級ホテル並みの設備を用意している。

・しかし、こうした動きの一方で、このような外国人向けの医療に力を入れて一般の人々の医療がおろそかになってよいのかという問題提起が行われている。

・医療ツーリズムの現状としては、タイでは年間200万人、シンガポールでは年間57万人の受け入れを行っており、インドや韓国も追随しようとしている。

・外国人を引き付けるためにはどんな対応が必要なのか。また、一般の人々への医療はどうしていけばよいのか。

・郡山の病院では、陽子線を照射してガンを死滅させる装置があり、この技術にサウジアラビアが着目し、病院の側も積極的に外国人患者を受け入れしようとしている。

・また、岡山県は、人口一人あたりの医療が整備されていることを背景に、中国人観光客への医療観光のPRを行っている。

・医療機関の国際的な規格という面では、日本では唯一千葉県鴨川市亀田総合病院がその国際認証を受けている。そして実際に年間700人の外国人患者を受け入れている。

・国際認証の水準は高く、3年おきに再検査が行われ、これに耐えられるよう亀田総合病院ではより高い水準の医療サービスを提供する取り組みを進めている。

・(自治医科大学教授 尾身茂)医療の国際化は必然の流れである。しかし、医療は民間企業のような純然たる産業ではない。相互扶助の精神に基づき、誰でも等しくサービスを受けられるという前提がある。

・(尾身)医療の国際化により、より医療水準の向上を図っていくことができるのではないかということが見込まれる。

・医療ツーリズムのひずみも表面化している。公立病院の医師不足である。タイのある公立病院では60人の診察を6人で行っている。また、多くの医師は研修医などの若手であり、設備も老朽化している。

日本医師会では、受けられる医療の格差につながるとして外国人の受け入れに反対している。一方で、厚生労働省は、「国民皆保険と両立する医療ツーリズム」を目指している。

・(尾身)ルールを決めないで医療ツーリズムを進めると医師の偏在や、発展途上国のように、経済状況に応じて受ける医療に格差が生まれる可能性がある。