クローズアップ現代「微生物とつながる農業」

・ 農薬や肥料を使わずに、エンドファイトという微生物の力を利用して病気や害虫に強い農作物を育てることが研究されている。これが成功すれば高い生産性が期待される。

・ りんごは農薬や肥料を使わないで育てることはきわめて難しい。しかし、これに成功した農家がある。森のような土壌をりんご畑に使うことでこれを実現している。その土壌には微生物が多く生息している。また、りんごの葉の内部にも微生物が生息している。

・ 従来の農法は微生物を排除してきた。この結果、作物は病害虫や環境の変化に弱くなってしまった。

・ (岐阜大学教授 百町満朗)COP10で生物の多様性が議論されたが、環境保全型農業を実現するためには生物防除が必要である。化学肥料を使うと有益な微生物まで殺してしまう。そうでなく農業生態系を形作ることが必要。

ニュージーランドでは、一般的な牧草の8割にエンドファイトが用いられている。それまでは害虫に食べられ枯れてしまい、植え替えが必要だった。エンドファイトを使うようになってから害虫の被害はほとんどなくなった。

・ 牧草のエンドファイトは企業で生産された。それまでは、牧草を食べた羊がおかしな動きを示していた。この牧草を研究したところエンドファイトが確認された。世界中のエンドファイトを調査し、羊には影響を与えず、しかも害虫には強いエンドファイトが見つけ出され、利用されるようになった。これにより得られる経済効果は140億円にもなると考えられている。

・ エンドファイトを使えば、作物の価値を高めることができる。日本では、美唄市を中心に76軒の農家で米作りに利用されている。

・ (百町)エンドファイトのリスクもあるはずで、そうしたことをきちんと明らかにして情報公開していくべきだろう。エンドファイトで生態系がかく乱されてしまうということもありうる。