NHKスペシャル「認知症を治せ!」

・ 生まれてからの記憶や能力を失わせるのが認知症である。本人はもちろん家族にも大きな影響を与える。

認知症は治らない病と考えられてきたが、新薬が開発され、症状の進行を止めることができるようになってきている。また、治療により症状が劇的に改善し元の状態に回復できる場合もある。

認知症には40歳~50歳の過ごし方が大きく原因している。また発症前に予防する研究も進められている。

・ 頭を強く打って入院、病院のベッドで過ごすうちに簡単なこともできなくなってしまった。息子は認知症の専門医をネットで探した。岡山大学病院で認知症の進行度とその原因を検査した。歩いてみると歩幅が狭く不安定になっていた。ここから認知症の原因は正常圧水頭症と診断された。歩行や思考は脳の前部で制御している。ここを水頭症が圧迫していた。わずか30ml水を抜いただけで症状が改善した。手術を行い、水を抜いたところ認知症から回復しコンバインの運転まで行えるようになった。

・ 正常圧水頭症は31万人いると考えられるが、手術を受けているのは1,200人に過ぎない。それ以外の者は診断で見逃されてしまっている。認知症の原因として正常圧水頭症は5%である。

レビー小体型認知症、脳にレビー小体というものが蓄積され記憶を司る海馬が小さくなってしまう。幻視、運動障害などにつながってしまう。これは認知症全体の17%を占める。認知症の進行そのものを止めることはできないが、薬により症状を和らげることができる。

・ (金沢大学教授)ここ10年で認知症の治療は大きく変わった。日本老年医学会、日本認知症学会などのHPで専門医を確認し、適切な治療を受けることが大切である。医師には日常の行動などを正確に伝えてほしい。

・ もっとも多い56%を占めるアルツハイマー病はどうか。アルツハイマー病は急速に脳が萎縮し、記憶力や判断力が失われていく病気である。アルツハイマー病に対しては今のところアリセプトという神経細胞の働きを一時的によみがえらせる薬しかない。しかしこの薬は症状の進行を止めることはできない。

・ レンバーという新薬がある。アルツハイマー病は神経細胞の中でアミロイドβ、次いでタウという物質が溜まり、そして神経細胞が死滅していくというものである。タウを分解する物質が20年前に発見され、これを利用してレンバーを開発した。イギリスでこの新薬を臨床試験で投薬されたアルツハイマー病患者が改善を見せている。来年薬としての認可を目指し、最終的な臨床試験を迎えようとしている。

認知症は防げないのか。脳の神経細胞アミロイドβが溜まり始める前に何らかの手を打つことはできないか。実に健康な大人の1~2割の脳はアミロイドβが溜まっているのだ。20年前からアミロイドβが溜まり始める。つまり60歳で発症するのであれば40歳から溜まり始めている。

・ なぜアミロイドβが溜まるのか。実は頭の中でいつも働き続けている箇所がある。ここが疲弊し、アミロイドβが溜まることが分かった。

・ 糖尿病と高血圧と認知症とは関わりがある。特に糖尿病はつながりが大きく、糖尿病でない人に比べ1.8倍認知症になりやすい。

・ 糖尿病患者の脳は、血管がもろくなり、破れて出血する。そうなると周囲の神経細胞が死滅してしまう。そしていったん認知症になると急速に悪化してしまう。

・こうした糖尿病や高血圧といった生活習慣病にならないよう食生活の改善や運動を行うことは、認知症を未然に防ぐための手段として有効である。