視点・論点「家族依存型社会と“家族の壁”」精神科医 斎藤 環

内閣府は引きこもり人口を69万6千人と公表した。また、厚生労働省の調査では引きこもり人口を毎年減っているとしたが、こうした数字は調査の仕方によって多くも少なくもなる。悉皆調査である国勢調査でさえ回答精度が低くなっている。引きこもりの調査については家族の壁がありなおさらである。つまり実態としては、引きこもりは内閣府厚生労働省の調査結果よりももっと多いと考えてよいだろう。

児童虐待の問題も家族の壁がありなかなか手が出しにくい。児童相談所には臨検の権限があるが、実際に行使されたのは二例のみである。児童相談所の人手や手続きなどがあるものの、最も大きいのは家族の壁ではないか。

・ 引きこもり、高齢者、児童の共通点は社会的な弱者であることであり、政府は支援に消極的であった。いわば家族による支援に丸投げされてきた。

・ 先進国には青少年問題を専門に扱う省庁があるが日本にはない。この分野では政府は家族に依存してきた。