クローズアップ現代「増殖する監視カメラ」

・ 日本国内では330万台の監視カメラが駅や電車・タクシー車内、商店街などに設置されており、このカメラによるプライバシー侵害等の被害が多く起きている。インターネットに撮影した映像が流出したり、隣同士で監視しあったりしている。

・ 日本では監視カメラに規制がない。一方ドイツでは早くから規制が行われている。

・ 現在官民上げて監視カメラの設置が進められている。たしかに監視カメラは犯罪を抑止する力になっている一方で、運用にかかるルールはあいまいである。

・ 渋谷駅からNHKまでの800mで見ると、商店街では10m間隔で設置されており、合計243台(うち自治体や警察管理31台、自主設置は212台)もあった。

・ 最近では1万円を切るカメラも登場している。3Dで顔かたちを認証し、雑踏の中でも対象となる者を見分けられるような高い性能のカメラもある。

・ イギリスは420万台の監視カメラ大国である。自分の飼い猫をゴミ箱に捨てられた飼い主が、監視カメラで撮った映像をインターネットに流出させた。これにより、すぐに捨てた者が見つかったが、その者は批判にさらされ、職を失うことになった。たしかに猫を捨てるという行為は問題だが、果たしてここまで社会的制裁を受けねばならなかったのかどうか。

・ (早稲田大学教授西原博史)監視カメラを設置した人の多くは悪用しようとして設置しているわけではない。しかし、一方でわれわれには「撮られない権利」というものもあるはずだ。設置者に監視カメラのことについて確認すると、多くは監視基準というものを明確にしていなかったり開示すらしない、つまり設置してもそれは当たり前だろうという考え方に基づいている。

・ ドイツでは厳しい規制があり、規制に違反すると最大で3,400万円の罰金が科される。ドイツではナチスによる統制の歴史があり、こうした悲劇を繰り返さないために厳しい規制をしている。また、「情報監察官」を設置し、同監察官は監視カメラを撤去させたり事前審査したりする権限を持っている。

・ 監視カメラ大国のイギリスでもようやく法による規制に乗り出した。このきっかけとしてはイスラム系住民が居住する地区で、テロ対策を目的に警察が多くのカメラを設置したことに基づいている。

・ (西原)監視カメラ設置に関するルールを作ると、かえってルールに従っている限り設置してもいいだろう、という容認する姿勢にもつながりかねない。ドイツの情報監察官のように、監視カメラを設置する際に、当事者との話し合いによってどうすればよいのか、という解決策をともに探っていく姿勢が必要だろう。国はまずどういうところでは撮ってはいけないなどの大原則を作ること、そして地域では話し合ってどうするかを検討することが必要である。監視は「不信感」を前提としている。しかし監視カメラの設置では本当の意味での地域生活の安心感は得られないはずだ。