現代環境法の諸相( 09)第4回「環境法政策~政府の役割(2)」

現代環境法の諸相 (放送大学教材)

現代環境法の諸相 (放送大学教材)

・ 政府の役割は規制をすることだという言い方があるが、どの規模のものに対し、どの程度、どのような手続きで、といったことを良く考える必要がある。

・ 「環境法政策の目標」と「環境責任のあり方」を前回見たが、今回は「環境リスクの管理」と「政策の形成と実施のプロセス」を見ていきたい。

・ 環境問題への対応としては不確実な被害に対して対応することが必要になる。

水俣病のような典型的な公害問題の特徴は、多量、集中、特定、単独、確実である。これに対し現代的環境問題の特徴は少量、広域、不特定、長期、複合、不確実である。

・ 行為と因果関係が明確な場合には被害の未然防止ができる。環境基本法第4条は、「未然に防ぐ」ということを基本としている(未然防止的アプローチ:日本の環境法は概ねこの傾向にある)。

・ 不確実性・不可逆性を持つ事案についてどう対応すべきなのか。水俣病では当初因果関係が明らかではなかった。1980年代からこうしたことへの対応の検討が深められてきたが、1992年のリオ宣言第15原則では「予防的アプローチ」を宣言している。

特定外来生物法では、未判定外来生物輸入手続きについて大臣は届出があれば判定手続きを行う。生態系に影響がないという通知がない限り輸入はできない。

・ 予防的アプローチは比例原則(バランス性)に反しないか。環境リスクは、不確実性×環境影響である。環境法的には比例原則を修正することができるのではないか。一度被害が発生した場合に元に戻すことは難しいということをふまえ、充分な科学的データがなくとも規制されるべきである。

・ 重い刑罰があっても産廃の不法投棄はなくならない。刑罰による威嚇よりも優良事業者の表彰や税金の優遇策・違反事業者の公表が効果的である場合もあるだろう。

・ 濫開発は、適法な開発である。ルールに従った環境破壊が行われている。こうしたこを防ぐため条例による環境配慮も行われるようになってきている。