クローズアップ現代「羽田国際化 アジアの活力を呼び込め」

・ 羽田が国際化されることに伴い、日本各地の観光地では入込客の増加に期待を高めている。実際北海道などではこれまでも外国人観光客が増加傾向にあるが、羽田からだと国内各地の空港へ直接乗り換えて向かうことができるため、例えば今まで千歳空港から7時間もかけて知床へ行っていたのが、これからは、今回の国際化により羽田から知床の近隣の空港まで直接行くことができるなどアクセスの利便性は向上し、さらに外国人観光客が増加することが見込まれる。

・ 今なぜ羽田を国際化する必要があったのか。その背景には、成田だけではアジアの航空競争に勝つことができないということがある。成田は24時間利用することはできない。このためアジアの増え続ける航空需要に応えられない。

・ 「アジア・ゲートウェイ構想」に基づいて今回の羽田の国際化が進められている。この構想では、アジアの成長を取り込むため「羽田の24時間化」を柱の一つとしている。

・ 日本の危機感に火をつけたのはアジアのハブ空港であるシンガポールチャンギ空港である。チャンギ空港は世界各都市と結ばれているだけでなく、4万5千人を収容できる国際会議場が空港のすぐ近くにある。カジノもあり、ビジネスと観光を結びつける役割を果たしている。

・ また、ビジネス客のみならず中間層を取り込むため、マレーシアなどの格安航空会社も乗り入れており、こうした航空会社では空港施設のボーディングブリッジなども利用せず低廉なコストでの運営が可能になっている。チャンギ空港の年間利用者は3,700万人、実にシンガポールの人口の七倍に達している。

・ (戸崎肇早稲田大学アジア研究所教授)アジアの航空機利用者は年間20%以上伸びている。こうした客を取り込むにあたっては、今日から行われる羽田の国際化は遅すぎたくらいであり、土壇場でなんとかアジアにおける地歩を固めることができたともいえる。

・ (戸崎)成田も、発着枠の増加が行われることにより羽田とセットで伸びていくだろう。ただし、日本全国という視点で見ると、東京への一極集中化は進むこととなり関空や中部空港などの地盤沈下も起こりかねない。羽田はまだまだキャパシティは小さい。一方成田は夜間の発着ができない。相互に切磋琢磨しながら一体的に成長していくことが必要である。

チャンギ空港では徹底した利用者目線のサービスが志向されている。サービスをチェックするスタッフがいて、利用者の満足度を絶えず確認している。また、物流の規制緩和によりグローバル企業の物流拠点となっている。申告、審査、許可など、通常は地上で時間をかけて行っている手続きを、離陸した後に行うこともできるようになっており、スピーディな輸出入が可能である。

・ (国谷)チャンギ空港ではさまざまな手続きがスピーディであるばかりでなく、トランジットの時間も楽しめるような仕掛け作りがされているが。

・ (戸崎)これからはチャンギ空港のような空港におけるサービスが非常に重要である。シンガポールは外国とのつながりがすべてであり、その意味で空港は国家戦略の拠点であった。一方、日本では空港は公共事業としての視点が中心であり、作ったら後は何とかなるだろうという考え方だった。

・ (馬渕国土交通大臣)航空サービスの質を高める取り組みが遅れていた。これを高め、そして量も増やしていく。これによりビジネス展開に有利なところだという認識を高めていきたい。

・ (戸崎)空港だけでなく、モノレールの24時間化などアクセスできる体制、情報の提供、ホスピタリティ、言葉の問題などを一体的に考える必要がある。また空港離発着の使用料も引き下げるなど、他のアジアのハブ空港と競争できる体制作りが必要である。