白熱教室の衝撃

・ (会社員)高い倫理の話をしながらもそれが現実社会と遊離していないところがよい。

・ (会社員)こうした議論をすると各論に流れがちだが、サンデル教授は対話を通じてそうしたところに流さないところがすごい。

・ (国会議員)議論の水準が高い。国会も見習うべき。

・ 【「持続可能な東京とは」という議題で東京都庁版白熱教室が行われた。】

猪瀬直樹)命題を確認し、具体的な根拠を持って主張する。こういった議論のルールをきちんとふまえていたところを見習うべき。この教室でサンデルは一つの型を示した。これを参考にすべきだ。日本語の力を磨くということだ。

・ 【白熱教室を見ながらツイッターで議論を交わしたのが岡田斗司夫氏である。】

岡田斗司夫)この教室を見た人はみんなで感想を言い合うべき。考え続けるということ、これが道である。

・ 【大学の教員はこの教室に衝撃を受けた。】

横浜市立大学上村准教授)1,000人を対象に対話できるところがすごい。またポケットに手を入れて歩くところなどはアクターである。

・ (大学教員)いかに深く考え、それを構造化することが必要であるかということをサンデルは示している。ここに大学の存立意義もあるのではないか。これはネットで検索して知識を得るのとは違う。対話型は難しいことではない。しかしそれだけではなく、教育の仕組みを変え、カリキュラムを減らし、ティーチング・アシスタントを付けることが必要ではないか。

・ (文部科学副大臣)教育予算はアメリカの6分の1に過ぎない。ティーチング・アシスタント、リサーチ・アシスタントのような細やかなことができにくい環境にある。この国が本気であのような教育をできるか議論しなければならない。

○ サンデル教授の講義テクニック

・ (千葉大学小林教授)なぜ白熱教室に引き込まれるのか。対話型であること、身近な事例を取り上げること、さまざまなジレンマを題材にしていることがある。

・ 例えば運転中の携帯の使用による死亡事故が起きること、これは費用便益分析からは問題がない、これを功利主義者だとサンデル教授が言っていること、存立する立場を明らかにしていることは意味がある。

・ (サンデル教授)ずっと手を挙げ続ける学生は自分本位で考えていることしか言わない、議論にならないため当てない。少し考えてから手を挙げる学生を当てる。せきが聞こえてくる、足を組みかえるということは講義がうまくいっていないことを意味する。

・ (小林)能力に応じた報酬に関する議論をする中でロールズの正義論の本質に迫っている場面もあった。能力に応じた報酬というけれど、能力はその家庭の環境や生まれる順番によっても決められてくるとロールズは述べている。また、第12回(最終回)では同性結婚のことを扱っているが、弱者に対する優遇策を唱える(アファーマティブ・アクション)学生に対しての対応が興味深い。特定の人のことではなく一般論として言わせている。感情的な議論にならないように気を配っている。芸術的にしてかつ哲学的な議論を行っているのがサンデル教授の真骨頂である。

・ (サンデル)あのようなやり方を他の教科でできるかというと疑問だが、自分で考え、議論を交わすことは非常に大切である。そうしたプロセスを通じて自分独自の立場を確立することがもっとも重要である。

○ 日本で対話形式(ソクラテス方式)の講義は可能なのか―鼎談―

・ (井上達夫東京大学教授)日本では、議論をすること、発言をすることについて忌避的である。

・ (サンデル)1,000人の中で発言をするのは非常に勇気のいることである。今日の経験からすると、アメリカの学生は個人主義で、日本の学生は恥ずかしがりということには賛成できない。学生が自分で発言するような場をつくることを、大学のみならず社会全体に適用すべきであると考える。それがより広範な市民教育である。

・ (小林)ゼミでは対話型だが、講義でも対話型を今年から持ち込んだ。会を重ねるごとに議論は活発になっている。したがって対話形式が日本でできないということはないだろうと思う。間違ったことを言ってはいけないということがためらいとしてあるようだが、これは高校までの教育が正解を導く教育だったからだろう。

・ (サンデル)今後、白熱教室を世界的に広げ、グローバルな教室を作り、日本、中国、インド、南アメリカの学生が同じ哲学の教科書を読んで論議を深める、哲学や真理、共通善についての議論を継続的に行っていきたい。

■コメント

・実社会での議論はどうしても立場を前提として「この組織にいるから」「この職位だから」を前提からはずして行うことが難しい状況にある。しかし、これを行うことのできる素地というものをそれぞれの立場で実際の行動を通じて作っていくことが必要。

・このためにはやはりシンプルだがディベートの基本ルールを確立すること、猪瀬副知事のいう「日本語の力」を高めることが必要である。

岡田斗司夫氏のツイッターを通じた議論、これは今後に活かせそうな気がする。