社会階層と不平等( 08)第3回「結果の不平等」◇東北大学大学院教授・佐藤 嘉倫
- 作者: 原純輔
- 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会
- 発売日: 2008/03
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・ 不平等については、「機会の不平等」と「結果の不平等」があるが、今回は「結果の不平等」をテーマとする。また、たんに実態をとらえるだけではなくどうしてそのような状態になったのかを確認していく。
・ 不平等をはかる係数としてジニ係数があるが、これは0であれば完全平等、1であれば完全不平等となる。世帯数と所得額の累積比(ローレンツ曲線)の45度線からのかい離面積×2がジニ係数である。
○所得の不平等
・ 橘木氏は日本におけるジニ係数は、1980から1992年にかけて大きくなっている=不平等が拡大していると検証した。一方、大竹氏はたしかにジニ係数は大きくなったがこれは高齢化のせいであるとしている。(高齢者世代におけるジニ係数は固定化しがちであるため、高齢者間の所得格差を是としていいのかどうかという問題がある。)
・ 結果の不平等をもたらすメカニズムとしては、所得の不平等がある。これは現役で働いている人とそうでない人を分けて考える必要がある。
・ 現役で働く人の所得は、労働市場における需給関係、人的資本、労働市場における人々の位置によって決まってくる。
(管理職とそれ以外では所得が異なる。また同じ職業でも学歴によって所得は違ってくる。勤める会社の規模や性別も決定要因となる。(正規>非正規、大企業>中小企業、男性>女性))
・ 親世代の所得も子世代に比例的に関係している。
・ とりわけ所得の違いをもたらすものは職階別の違いである。管理職になると所得が伸びる(とくにホワイトカラーで顕著)。ただし、これは成果主義・能力主義の浸透によって変わってくる可能性がある。年功序列の崩壊により経営層が大きな報酬を得る形に変わりつつある。ただし、経営層の高所得化の傾向は欧米と比べて顕著ではない。ホワイトカラー労働者について、かつての賃金における優位性がなくなりつつある。
・ 退職者の収入としては年金、財産所得、子どもからの仕送りが主たる構成要素である。高齢者の所得は現職のときの最終職の状況により大きな違いがある。
・ 階層文化(勤勉さなど)というものもある。階層文化は学歴によって変わってくる。企業としては階層文化を体現する学生を採用するという側面もある。
○資産の不平等
・ 資産の不平等は、過去の所得と相続贈与による。相続贈与は遺産相続と生前贈与があるが、遺産相続は偶発的に発生する。そのタイミングによって相続資産は変わってくる。また、生前贈与の主たるものは子どもが家を建てる際の贈与である。
○ 結果の不平等の国際比較
・ ジニ係数の国際比較、白波瀬佐和子氏の欧米やアジアを対象とした研究によれば、日本では中位の不平等であり欧米に近い形である。
・ 「クズネッツ仮説」という、経済成長中は不平等が大きくなるが、安定期には平等に向かうという説がある(逆U字型カーブ)。しかし、実際には経済のグローバル化、資本・人々の国際移動を受けて不平等が強まっている傾向が見られる。