西部邁ゼミナール 『核』が日本を沈没から救う!

・ (伊藤貫)「核なき世界平和」という言葉、これは今初めて出てきた言葉ではない。第二次世界大戦後にもアメリカがそうした言葉を発していた。しかし、他国ではアメリカが核を独占したいためであると冷ややかに見ていた。そして実際にアメリカは核を増やし続けた。今改めてアメリカがそう言っていることに対して、日本はあまりにも言葉通り受け取ってしまっている。

・ (伊藤)アメリカは、ロシアや中国や朝鮮が核武装しようとも、日本やドイツは自主防衛ができない国家にしようと考えていた(1972年周恩来キッシンジャー対談)。NPTは世界的な核の非拡散ということというより日本とドイツに核を持たせないことが目的としてある。「アメリカだけが自主防衛できる国」という岡崎、田久保議論があるが、彼らは核戦略に関する基本的な研究論文に目を通していないのではないか。そんなことはなくウォルツも言うように核を百発から二百発程度持てば自主防衛はできると考えられる。

・ (西部)国家防衛としては、まず単独で防衛できることが最低必要なことで、二段目に友好国による協力、三段目に国連といった順序で国を守る、ということではないか。

・ (伊藤)15~17世紀に国民国家(Nationstate)の概念が成立した。とりわけウェストファリア条約以降この概念が固まったが、ホッブズの基本的考えを確認するまでもなく、まず国家は外国から自国を守るということは基本的原則であり、これをできない国家は国民から信頼されない。

・ (西部)pacsというのは、強国により平定された状態ということを意味する。決して日本で言われているような平和を意味するものではない。

・ (伊藤)護憲左翼(戦争は嫌だ(朝日新聞))と親米保守(アメリカを正義とする(産経・日経新聞))の議論が日本では中心だが、これは5歳と10歳の議論である。

・ (伊藤)昔から日本人の教養ある階層は四書五経を納め、明治30年くらいまでは和漢両方に通じていたいわばバイリンガルであったが、現在は幼稚化してしまっている。今は、中国の方が日本より思考能力は大人である。彼らはコミュニケーション能力と戦略の立案に優れ、アメリカの実情をよく理解し、アメリカの世論さえ動かそうとしている。

・ (西部)日本は中国で金儲けをすることしか考えていない。これが第一の目的となっているため、国家として中国と対峙することができない。

■コメント

・中国における日本品不買運動などを起こしている学生など見ても、若いころの学校教育なりマスコミの報道なりが思考パターンの多くを制御していることは間違いない。本質的なことほど、すでに結論があり思考を許さないという状況がある。

・これは現在の日本における「平和」の捉え方・考え方についても同じことが言えるのかも知れない。