デザイン工学( 08)第2回「21世紀は『こころ』の時代」◇福田 収一

デザイン工学 (放送大学教材)

デザイン工学 (放送大学教材)

・人間のコミュニケーションは、動物のような「危険を知らせるため」などに限定されたコミュニケーションではなく、ある意味「無駄な話」が重要な位置づけを持っている。

・WEB技術は、人間のコミュニティをバーチャルに構築しており、同じ趣味や考え方を持つものどうしがネットワークでつながるようになっている。(SNSなど)

・地理的に限定されたマーケットが急速に消滅し、WEB上に形成されている。

ブルーオーシャン戦略、これまでの伝統的な市場で対決していると血で血を洗う状況となるが、横に目を向けると青い大洋が広がっているということである。ブルーオーシャン戦略ではWEBの話は出てこないが、いっていることは同じである。デザイン工学上も重要である。

・携帯の写真、解像度が上がっているといわれる。記録のためでなく、時間を共有化するために利用されているのではないか。揺れていてよく分からない写真の方が臨場感がある。21世紀は仲間づくりの世界である。

・愛は人間どうしだけの話しでなく、モノに対する愛着もある。デザイン工学では20世紀は機能のみが重視され、どんな場合でも機能を再現することが重要とされていたが、21世紀は愛着を持つ機械ということで人間と一緒に成長するシステムをビルトインすることが課題となる。人間と機械が一体となることが21世紀の課題である。自分の恋人はハーレーダビッドソンである、など。

・人はだれでも尊敬されたい。ブランドはその欲求に関連している。ブランドは、自分が体験していないにもかかわらず品質を保証するものである。ブランドは、化粧品やファッションで注目されてきており、工学では注目されてこなかった。

・2割が先導し、8割が追随するというのが従前のスタイルであったが、製品のライフサイクルは短くなり、このスタイルは消えつつある。先導役がいなくても信じて使うという21世紀のデザイン工学は「未体験の体験化」が課題となる。

・人間は調整したいという欲求を持っている。車は長い間エンジンがかかりにくいものであったが、そうした車を人間は手放さなかった。自分が調整して動かすことで満足していたのである。自動で目的地へたどり着く車は売れないのではないか。

・基本設計→詳細設計→生産設計という図式が20世紀の設計であった。自己実現・調整の世界は失敗の世界でもある。失敗し、改善するという施行錯誤サイクルとなる。その過程が価値を生み出す。専門家の作った陶器より自分の作った楽焼を使うことがうれしいということになる。

・今後は生産に関する情報を利用者も共有することが必要になる。

・それぞれの利用者の価値観に沿った、また新しい価値を生み出すこと、これがマーケットの創造に寄与する。