一週間de資本論 <全4回> 第4回「歴史から未来を読み解く」

一週間 de 資本論

一週間 de 資本論

マルクスは資本主義の法則を研究し、一定の形態になることを予測したが、ジャック・アタリという研究家はこれを支持している。

・ 先進国の停滞、後進国の成長、格差の問題をこの視点から読み解いて見たい。

ジャック・アタリカール・マルクスあるいは世界精神』では、グローバル化によりマルクスの考え方が現れるようになっているのではと唱えている。

マルクス大英図書館で数百冊の本を読み資本論をまとめた。

・ 15世紀から18世紀に生まれた資本家により羊毛の生産が始まり、囲い込みから賃金労働者が生まれ、資本家が成長し、世界市場へ進出していく。

グローバル化により、世界で失業の問題が顕在化していく。資本主義社会はどうなるのか。

・ 資本主義的私有の最後の鐘がなる。収奪者が収奪される。かつては、資本主義が滅亡し共産主義が生まれるという解釈がされた。

・ このマルクスの描いた未来像は、社会主義体制の崩壊を受けて、誤りだったという捉え方をされているが、マルクスはまず労働者による体制が成立する前にグローバル化がされると考えていた。つまりマルクスの描いた図式は現代以降に顕在化するのではないか。

・ (田中直毅)『資本論』は信じられない。この書物は資本主義の現実を記述するには優れているが、実は、マルクスの百年前アダム・スミスがすでに正確に記述している。マルクスの書物は、「搾取」、「収奪」、「奪権」など情感に訴える表現を使ったために現代にまで残ったのではないか。しかし、その学説は、それほど貢献していない。

・ (田中)研究者は南北問題にマルクスの図式を見た。中心-周辺理論。しかし、先進国と発展途上国は逆転しつつある。(先発逆転)つまりマルクスの図式と違う。

・ (的場)先進国は賃金が下がり、発展途上国は賃金が上がっていっているのではないか。

・ (的場)ソビエトや東欧は開発独裁であった。20世紀に起きた革命は独裁であった。本来のマルクスの描いた革命とは違う。

・ (的場)ジャック・アタリは、将来破局が起きるとしている。それを防ぐにはグローバル化のもとのバランスが必要。世界政府がなければ生き残ることは出来ない。資本主義の不平等を誰も改善していない。

・ (田中)ジャック・アタリの世界政府というのはまったく何も言っていないのと同じでは。国民国家をふまえていない。

・ (的場)経済学だけで読むのではなく、古典として、10年先ではなく、100年先、1000年先のものを読み解く議論の材料にしていくべきでは。

■コメント

・この番組は全体として物足りない。資本主義の現在をふまえた資本論マルクスブームを受けて急ごしらえで作った印象がある。ところどころ「なるほど」と思わせる部分もあったが、20年前に大学で教えられていたいわゆるマルクス主義経済学からあまり進歩していないように思われる。

新古典派経済学のような、アトムとしての合理的経済人をふまえ市場を通じて適正配分は行われる考え方は、現実として機能していない。これは新古典派のいうように市場機能の阻害要因によるものではない。もともと人間の捉え方、あるいは社会の捉え方にズレがあるためである。しかし、新古典派を凌駕する枠組みは経済学にはない。

・この枠組みを批判的に捉えなおすために、本来マルクスが描いた「交通」のあり方、全体を見る視点としてのマルクスをもう一回再評価すべきであったのでは。

評価:★