西部邁ゼミナール「いつまで官僚バッシングを続けるのか」

・ 役人バッシングが世の風潮となっている。90年代の初頭くらいから続いている。

・ (中野剛志)官僚主導といわれるが、1950年くらいからは官僚主導ではなかった。しかしバブル崩壊とともに官僚バッシングに入った。

・ 民意と言う言葉ばかりが先走っている。これは自分に自信がないだけである。

・ 物を書く役人というのも役所の中ではつらいのでは。足を引っ張られるのではないか。

・ (中野)構造改革、小さい政府ということに対し、官僚はそれに反対しているといわれるが、7割は逆に賛成している(総論として)。ただし、個別の政策については反対している。

通産省は、戦後適正価格、適正価格という規制をかけ、これが成功した。しかし、一方で最近は規制緩和といっせいにいい始めている。

・ 教科書にあるアメリカ的な民主主義、自由主義を役人になって導入しようとする。また社会人になって朝日新聞日経新聞を読んでそれが世間のことだと勘違いしている。

・ (中野)すでに官僚に指導力はない。以前とは違う。すでに官主導でもなく、罰則付きの法律が世界的に見て少ない、また収用も少ないということがある。カール・フリードリッヒは、官僚が政治を予測して対応するといったが、つまりお利口さんのすることをしているだけである。

・ 日本は小さな政府である。今は異常に大きな政府があると言う幻想がまかり通っている。政治家は経験がない、官僚は経験を積んでいる。その知恵を利用して、相互乗り入れの中で国家は安定する。

・ (中野)世の中、複雑な社会、福祉国家になってくると、政治家も官僚のようなことせざるをえず、逆もまたある。つまり相互乗り入れが必要であることは以前から言われてきた。

・ 官僚は、準政治家である。政治は政策立案、実行するというが、子ども手当をいくらにするかなどは財政を踏まえたきわめて実務的な話であり官僚が考えるべきことではないか、政治家が相互乗り入れで発信していけばよい。

・ (中野)グローバル化によって政府の役割は小さくなるといわれていたが、まったく逆で、さまざまな調整や戦略立案のため政府を強くしなければならなかった。またバブル崩壊でデフレ警戒をしなければならなかった。サッチャーレーガンの手法を真似ようとしたが、彼らはインフレ退治のための政策として小さな政府、規制緩和を行った。それを小泉改革と称してデフレの世の中にやってしまった。

グローバル化により国家間のコンフリクトは強くなる。ビッグ・ガバメントが必要だった。格差是正のための社会福祉を小さな政府でできるはずはない。子ども手当など、大きな政府でなければ出来ない。

・ (中野)民主党がモデルとして考えているイギリスは公務員数を急増させている。戦後の世界で12年以上デフレという社会はない。根本的に経済政策が失敗したということである。

・ 朝日・日経新聞に入社するのには千倍の競争率で入るのは難しいが、入ると馬鹿になってしまう。世間について教えてくれるはずの新聞、テレビ、教科書などがまったくおかしい。官僚主義(複雑なことを単純な形式と豊富なデータで押し通そうとする)はよくないが、官僚バッシングはおかしい。能力が落ちているものをさらに落とそうとしてはいけない。