社会階層と不平等「教育と階層・不平等」原純輔
- 作者: 原純輔
- 出版社/メーカー: 放送大学教育振興会
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
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・日本では早期に学歴社会が成立した。1872年に公教育制度が整備され、1905年には義務教育就学率は100%に近くなっている。同じく、中東教育は1975年に95%に達している。大学・短大への進学率は現在50%に達している。
・近世は世襲であったが、近代では、どんな教育を受けどんな職につくかということが階層につながるようになった。
・なぜ日本に学歴社会が成立したのか。イギリスでは貴族の没落とともに、産業資本家が台頭した。そして中間層も生まれたわけだが、日本では、教育により中間層をつくろうとした。
・最初から学歴によって就く業務と賃金に差をつけた。能力をふまえたものではなく、いわば会社身分制のようなものであった。
・二次大戦後、教育に大多数の国民が関心を持つようになった。1960年代から1970年代半ばの高度成長期に多くの人が高校まで、さらには大学へ行くようになってきた。
・ホワイトカラー(管理、事務)、グレーカラー(販売、サービス)、ブルーカラー(製造)などの大学進学率は一貫して上昇しているが、格差は存在している。
・日本社会は学歴社会であり続けたが、1960年代に盛田昭夫『学歴無用論』など、弊害を指摘する声も高くなってきた。
1.受験競争が人間性を歪める
2.学歴主義は本来の実績・能力主義とはかけはなれている
3.学歴が一種の身分と化し、再生産されている(ピエール・ブルデュー)
・再生産論は、上層階級は高い収入のみならず、文化、行動様式、言語など閉じた社交社会に属することが再生産されていると考える。
・大都市のサラリーマンについて、進学塾、中高一貫教育などへの志向が高くなっていたことから、ブルデューの理論が注目されたが、フランスのような階級社会の理論はそのまま日本へはあてはめにくい。
・ノンエリートであっても人並みに生活できる、という考えが定着し、高い教育を身につけようとする考えは薄れ、学級崩壊などへもつながっている。
・学歴社会は1980年代以降大きく変わった。指定校制の禁止、男女雇用機会均等法の施行による。四大卒の女子の就職先は広がった。
・学歴はこれまで十分条件であったが、これからは必要条件となる。管理職型学歴社会から、専門職型学歴社会へ変わりつつあると考えられるが、まだこれはわからない。
・また、学歴を持たない人への処遇、高卒者はホワイトカラーがかなり少なくなってきている(約20%)。かつては中卒者の仕事を高卒者が担うようになっている。また、高卒者の雇用条件は不安定である。
・これにはグローバリゼーションと、20年に及ぶ不況により、派遣で対応しようとしたり、厳しい実績が求められることから定着率が低くなっている。
・対策は以下の通り。
1.最低賃金の引き上げ
3.労働時間の短縮
4.自分探しと技能教育に偏った職業教育を改める