オペラ『カルメン』ロイヤル・オペラ・ハウス(UKオペラ@Cinema)

迫力のオペラである。とくに登場する女たちの迫力が凄い。第一幕でタバコ工場から煙をふかしながら女たちが現れるシーンから始まり、男をものともしない肉体的にも精神的にも強い女たちがたくさん登場する。とりわけカルメン役のアンナ・カテリーナ・アントナッチ(S/Ms)の迫力は群を抜いている。劇中では自分の恋心をうたいあげる場面もあるが、どちらかというと目立つのはその剛さである。

見どころも満載で、とりわけ圧倒されたのは第二幕、リーリャス・パスティア(居酒屋)での女たちのタンバリン片手の歌の場面である。また、ほどなく闘牛士のエスカミーリョ(イルデブランド・ダルカンジェロ(B/Br))が馬に乗って現れ、馬上からうたいあげる場面も凄い。また、ドン・ホセ役のヨーナス・カウフマン(T)は細身であるが高音の伸びはすばらしいものだった。

見事の一言に尽きる舞台であり、オペラの中でももっとも上演回数の多いこのオペラではあるが、密輸団に身をやつした山中での場面、最後の二人の死など隠々滅々とした形での終わりにつながっていくところは何度観ても好きになれないところだった。第四幕で現れるドン・ホセはやつれ切っている。

また、音楽も、「耳に馴染んだ名旋律」(パンフレットより)ではあるが、モーツァルトヴェルディと比べてしまうと、シンプルな旋律という気がしなくもない。おそらく中高生の当時にこれを観たのであれば大感激したと思うのだが。

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