オペラ『フィガロの結婚』ロイヤル・オペラ・ハウス(UKオペラ@Cinema)

これは、2006年にロイヤル・オペラ・ハウス(コヴェントガーデン)での公演を映画の形式にして上演するという、日本では初めての試みである。すでにメトロポリタン歌劇場の公演は一昨年から歌舞伎座はじめ各映画館で上演されており、これはその流れを引き継ぐものである。

映画形式での上演ということでみると、メトロポリタンで実現しているすばらしいカメラワークはここでもふんだんに発揮されており、公演の息遣い・表情を、ある意味では生の公演以上に伝えるものとなっていた。

そしてコヴェントガーデンの演出、舞台装置、歌手ともに文句のつけようのないものであった。とりわけ舞台装置は、メトのようなこれでもかという豪奢さはないが、18世紀の貴族の館をその建築、「年季の入った」汚れや傷みなどにいたるまで巧妙に実現していた。

衣裳もふんだんに宝石を使うメトとは違うが、当時の様相をよく再現させていたのではないか。

歌手は、フィガロアーウィン・シュロットBr)、スザンナ(ミア・パーションSo)、アマルヴィーヴァ伯爵(ジェラルド・フィンリーB/Br)、伯爵夫人ロジーナ(ドロテーア・レシュマンSo)ともにすばらしい歌いっぷりであった。とりわけフィガロ、アマルヴィーヴァ伯爵は印象に残る。歌だけでなく役者としても一流なのだ。それはちょっとした仕草や怒りの表情など細やかなところに現れていた。

字幕があるため芝居としての筋もわかりやすく、あきさせることがない。いつもであれば、第二幕までがヤマという感じだが、休憩をはさんだ第三幕、第四幕まで楽しんでみることができた。

難を言うとすれば音響面か。序曲からしてオーケストラの音がやや薄い印象を受けた。これは映画だからということもできるかも知れないが、大晦日に見たメトの映画版はもっと音響面では優れていたと思われる。ただし、コヴェントガーデンのオーケストラはやや控えめであるということも後に知ったが、長いオペラ(185分)ということもあり、抑え目なくらいが聞きやすさにつながるのかも知れない。

この作品のほかにも、『カルメン』、そしてグラインドボーン音楽祭における『エジプトのジュリオ・チェーザレ』、『ヘンゼルとグレーテル』が予定されている。また、公演ではなく映画作品として制作された『ラ・ボエーム』(ネトレプコ)も予定されているとのことであり、今後も楽しみである。

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