歌舞伎『雪暮夜入谷畦道(直侍)』歌舞伎座

雪の情景が印象的な舞台だった。

黒御簾からの低い太鼓の音が、雪の降る情景を効果的に表現していた。

舞台は、入谷のそば屋で菊五郎扮する片岡直次郎がそばをすすりながら燗酒を飲むところから始まる。雪の夜道を、大またでまたぐように歩いたり、小またで転ばないように歩いく。また、火鉢に手をかざしたり足を暖めたり、そんな細やかな仕草がいっそう寒さをしのばせる。

舞台が半周りしてそば屋から出た情景も好かった。ここで、直次郎と、按摩の丈賀(田之助)が、大川寮で療養している三千歳(菊之助)をめぐってのやり取りを行う。

幕がいったん閉じ、寮でのシーンに切り替わるが、この寮のしつらえも大変好ましい。寮を訪れた直次郎に、門の小屋根から雪がざっと降りかかる情景が印象的である。また、名曲といわれる清元に乗せた直次郎と三千歳のやり取りも情のこもったものだった。

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