バレエ『シンデレラ』など 新国立劇場

○ザハロワ/ウヴァーロフ『眠れる森の美女』

・2時間45分、ストーリーとしては、『白鳥』のような悲劇性・切迫性は薄いが、バレエそのものとしてはまさにグランド・バレエという言い方がぴったり来る。

・主役のオーロラ姫は45分、デジレ王子は1時間15分くらい経って登場する。

・演出面では、デジレ王子がリラの精に導かれ、霧の立ちこめるなか、小さな船で茨に閉ざされた城まで到達するところが印象的。

・3幕、婚礼の場では、赤ずきんと狼、長靴をはいた猫、青い鳥など、コミカルなキャラクターが登場する。

・アポテオーズではリラの精の後ろに突如として大きな噴水が現れる。

・全体を支配し、基調を作り、ストーリーを導いているのは明らかにリラの精。

○コジョカル『シンデレラ』

・1時間55分。

・コミカルな要素と古典的な要素の入り混じった演目。

・シンデレラの二人の義理姉(男性バレリーナ)の演技がとてもコミカル。『ドン・キホーテ』の皆に笑われている貴族ガマーシュ、キホーテの従者サンチョ・パンサに似た役柄。プリマに輝きがないと飲まれてしまうおそれあり。

・第一幕の前半、仙女が現れるところまでは、バレエというより演劇という印象。かわいそうな場面としては、シンデレラが亡くなった母親の肖像画を蝋燭の灯火で照らすシーン。

・仙女や四季の精の踊りでようやくバレエらしくなる。四季の精では、夏の精(黄色の衣装、西川貴子)、冬の精(白い衣装、寺島ひろみ)に主役級を投入か。

・音楽が印象的。さすがはプロコフィエフと思わせる重厚さあり。序曲の途中から、劇中でも繰り返されるシンデレラのテーマとなる曲想がある(変調による)。ただし、いわゆるファンタジー音楽ではないので、耳慣れしておいた方がより楽しめるのではないか。

・1幕の最後でかぼちゃが仙女によって上手奥に放り込まれ、かわって馬車が登場する。この馬車はシンデレラを乗せてあっという間に登場し、すぐに消え去ってしまう。

・2幕の舞踏会では、義理の姉が非常にコミカル。シンデレラが夜12時を迎え、慌てふためくシーンは非常にたっぷりと表現している。時間を迎えると、舞台背景に時計の文字盤の「??」が映し出され、鐘が鳴り響く。そして元のみすぼらしい衣装に戻ってしまうところは、あっという間である。これを同一人が演じているとはとても思われない。『白鳥』のプロローグのオデットが白鳥に変えられてしまうシーン(牧阿佐美版)と同じか。

◇ストーリーの展開

○第一幕(シンデレラの家)

・二人の義理姉、父と自分

・ショールの奪い合い

肖像画

・仙女

・舞踏会の準備(衣装、踊り:義理姉)

・ほうきの踊り☆

・四季の精の踊り

・群舞

・かぼちゃ→銀の馬車に(あっという間に消える)☆

○2幕(宮殿の舞踏会)

・道化の踊り

・二人の義理姉の踊り(周りはあきれ顔)

・道化の踊り、人々の踊り

・王子登場(55分)

・シンデレラ登場(60分)、パドドゥ

・四季の精の踊り(62分)

・決めのポーズ(65分)☆

・シンデレラのソロ(68分)☆

・王子のソロ(70分)

・オレンジの奪い合い(72分)☆

・シンデレラに帰宅時間が迫る(73分)

・王子とパドドゥ(74分)☆

・シンデレラ・王子と群舞(77分)

・12時を告げる鐘、時計の大写し(80分)☆

・シンデレラが元の姿に(81分)

○第三幕

・あわただしい帰宅、家の暖炉の前で気がつく(84分)

・ほうきの踊り(85分)

・義理姉オレンジの奪い合い(88分)

・宮中から王子、靴合わせ(90分)

・義理姉と仲直り(93分)

・暗転(95分)

・ろうそくの炎、星空の宮中

・シンデレラと王子登場(99分)

・コーダ(101分)

・大団円、星空へ(102分)

○酒井はな『ラ・バヤデール』

・3幕の「影の王国」のみ視聴した。32名の群舞となる。ミンクスの音楽もここは非常に印象的。全員の足並みがそろうのは難しいが、きわめて美しい場面。全体の白眉である。

【コジョカル『シンデレラ』】

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