富について

かつてNHKの経済ドラマ『ハゲタカ』のエンディング・テーマに使われた、エミリ・ブロンテの詩「富は問題にならぬ」(Riches I hold in light esteem)、意味深い詩だとおもわれるので掲載した。

「富なんてものは問題にもならない。

恋だって、考えただけで吹き出したくなる。

なるほど、名誉欲か?そういえば、昔夢見たこともあったが、

日が差すと忽ち消える朝露みたいなものだった。

もし私が祈るとすれば、自然に

口をついて出る祈りはたった一つの祈りだ。

「今の私の心をこのままそっとしておいてくれ、

そして、ただ自由を私に与えてくれ」という祈りだ。

嘘ではない。光陰矢の如しで、どうやら私の

終わりも近い、そこで私が求めるものは、ただ、

何ものにも囚われない一人の人間として、勇気をもって、

生に堪え、死に堪えてゆく、ということだけだ!」

訳詩 平井正穂『イギリス名詩選』平井正穂編より