バレエ『白鳥の湖』新国立劇場

前回、6月25日にこの公演を観てきたばかりである。だが、内容が充実しておりすばらしかったという印象が強く、期間中にもう一度観ておきたいと思い、再び新国立劇場を訪れた。

電話で当日の残席状況を確認したところ、C・Dなら何とか大丈夫とのことだったが、カウンターで確認するとすでにS・A・B・Dは完売、Cが1席、Z7席しか残っていなかった。Cをお願いしたところ、オーケストラのピット用とのことで売ることはできないとのこと、Z席を注文する。(Zは、舞台の下手が切れてしまうので、コール・ドを十分にみることができないという欠点があることがわかった・・・)

さて、今日の配役は、オデット/オディールが酒井はなさん、ジークフリート王子が山本隆之さんだった。全編を興奮状態でみた前回とは異なり、音楽だけでなく舞台の流れもほぼ追うことができるようになり、落ち着いてみることができた。

酒井はなさんは新国立の契約ソリストで、経歴を見ると、ほぼ10年くらいにわたり主要な役柄をつとめてきているようである。最初は、やや大柄で引き締まった体で、オデットに対して持つ印象である「きゃしゃ」さや「はかなげ」さとはちょっと違うのではないかとも思われた。しかし、踊り手としての表現力が表情、指先までとても豊かであり、オデットを演じるとき、オディールを演じるとき、それぞれ的確にバレエで表現していることがすぐに分かった。動きもとても滑らかであり、演じる白鳥は「飛翔して」いるように見えるシーンもあった。

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とくに素晴らしいと思ったのは第三幕「城内の舞踏会」で、黒鳥オディールとしての踊りが気品と優美さに満ちあふれていた。結婚を申し込まれる前からすでに女王としての品格がある、と言ったら言い過ぎだろうか。

新国立のバレエのすばらしさとしてやはりコール・ドを上げなければならない。コール・ドの白鳥たちが美しく演じながら、しかも主役も引き立てている。舞台基礎がしっかりしている。

第三幕の舞踏会の各国の踊りのシリーズでは、とりわけ最初の「スペインの踊り」(西川貴子さん、湯川麻美子さん)がすばらしく、舞踏会のシリーズへの期待をふくらませるものだった。「スペインの踊り」で、さんさんと輝く太陽がふりそそぎ、続く「ナポリの踊り」で青空がいっぱいに広がる感じがする。一方、「ハンガリーの踊り(チャルダッシュ)」「ポーランドの踊り(マズルカ)」は、前回に比べ若干印象が薄かった。

また、今回の牧麻佐美演出の目玉である「ルースカヤ(ロシアの踊り)」については、他の明るい広がりを持つ踊り・音楽に比べ、少々地味かなという印象だった。

ジークフリート王子については、この演目ではどうしてもオデットの影にかくれてしまうようだ。いっぽう、道化師はその体のこなしがすばらしく、「軽い」といった印象だった。

(以上、初台の新国立劇場ドトールコーヒーにて記す)